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人生漂流

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アベル・タスマンを歩く Abel Tasman Track

アベル・タスマン Abel Tasman について
アベル・タスマン(英語ではエイベル・タズマン)はニュージーランド、タスマニア、フィジーを発見したオランダ人で、1642年に現在のアベル・タスマン国立公園の西にあるゴールデン・ベイで陸地を見つけましたが、彼はそこを南米チリの南端だと思い込んでいました。湾に停泊しているとき、マオリ人が2艘のカヌーに乗って「敵がきたのか友達が来たのか」と偵察に来ました。そのときオランダ人が突然トランペットを吹いたため、マオリは敵の攻撃と錯覚して戦となり、オランダ側は4人の船員を殺されたため、上陸しないままで離れました。タスマンはここを「殺人者の湾」と名付け、二度とニュージーランドには来ませんでした。一方、マオリはそれ以来ヨーロッパ人に敵対的となります。タスマンの名前にちなんでタスマン海峡、タスマニアなどの地名が残っています。ヨーロッパ人が本格的にニュージーランドに来るのはそれから127年後で、ジェームス・クックが来たときです。

アベル・タスマン・トラックについて
アベル・タスマン国立公園はNZで最も小さい国立公園でありながら、もっとも人気の高いところです。公園の中に全国で9ヶ所あるグレート・ウォークス Great Walks の一つアベル・タスマン・トラック Abel Tasman Track があります。世界的に有名なグレート・ウォークスはミルフォード・トラックですが、NZ人がもっとも好むのはこのアベル・タスマン・トラックです。海岸線に沿って全長71キロの歩道があり、ミルフォード・トラックのように人数制限がないため、どこでも自由に歩けます。ただし寝具と食事を提供するロッジが少なくハット(小屋)泊まりとなるため、完歩するには寝袋と食料をかついでいかなければなりません。しかし乗り合いの水上タクシー water taxi を使えば、希望する場所に連れて行ってくれ、希望の場所でピックアップしてくれるので、日帰りができ、その手軽さもあるため人気があります。

前日ネルソンに泊まって、翌朝水上タクシーが出るカイテリテリ Kaiteriteri まで車で行きました。写真はカイテリテリの海岸で、朝8時頃から海水浴客、水上スキーの人などで賑わっています。
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水上タクシーは桟橋から出港するわけではなく、砂浜に板を渡してそこから乗客は船に移ります。私が乗った水上タクシーは80人ほど乗れる結構大きいものです。
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私はバーク・ベイ Bark Bay というところで降ろしてもらい、4時間後にトレント・ベイ Torrent Bay でピックアップしてもらうよう予約しました。バーク湾に向かう途中にスプリット・アップル・ロック Split Apple Rock (割れたリンゴの岩)という岩の横を通ります。真ん中からきれいに二つに割れています。
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このあたりでは岩の上でオットセイが寝そべっているのが見えます。ペンギンがいるのも一度見ましたが、残念ながらカメラを準備する暇がなく、船が通り過ぎました。

バーク湾で下船して南に向かって歩き始めました。ガイドブックにはバーク湾からトレント湾まで3時間、9キロの歩程とあります。写真の木は tree fern (シダの木)です。
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海に沿った道を上り下りしながら歩きますが、一番高いところで100メートルくらいです。
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マヌカの花が満開でした。
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海の青さと森の色のコントラストが美しいところです。
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写真はフォールス川 Falls River で、長い吊り橋が架かっています。
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3時間の予定でしたが、2時間かからずにトレント湾が見えてきました。トレント湾には別荘がたくさんあります。
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白い砂浜で上からも下からも照りつけるのでかなり暑いです。紫外線は相当強烈なようです。なるべく木陰を歩かなければなりません。
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この次のポイントはアンカレッジ Anchorage ですが、干潮の前後2時間はトレント湾を横切って行くことができます。それ以外の時間帯は山側の道を歩かなければならず、1時間余計にかかります。ちょうど干潮の1時間前だったので、多くの人が砂浜を歩いていました。それでも途中に山から水が流れてくるところがあるので、靴を脱いで裸足で渡らなければなりません。写真の人達は寝袋と大きなザックを背負っているので、ハット泊まりをしながら連日歩いている人です。
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時間に余裕があったので、私もアンカレッジまで歩いて行って戻ってきてもよかったのですが、無理はすまいと思い、歩く人々を眺めていました。

ひねもすこうしているのもいいものだと人が歩くのを眺めていました。私が座っているベンチの横でおばさんが靴を脱いで裸足で歩き始めたので「砂は熱くない?」と聞くと「熱くないよ」と言いました。しばらくするとさっきのおばさんは姿がわからないほど遠くに行っています。人間が歩くというのは偉大なことだと思いました。

水上タクシーの人に「迎えに行く頃は干潮で船を砂浜に寄せられないから、船が来たら靴を脱いで水の中を歩いて船まで来てくれ」と言われていました。予定時間より20分も早く船が来たのですが、けっこう沖にいて、手を振っています(写真、沖の方にいる船)。
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「えっ!あんなところまで?」と思ったのですが、仕方なく靴を脱いで砂浜から海に入ってジャブジャブ歩いて行きました。これだけ照りつけているのに砂は熱くありません。日本だと真夏の砂浜は火傷するくらい熱くなるのに、なぜなのでしょう。私の他にここから乗る人はいませんでした。船のあたりは腰の近くまで水があり、ショートパンツがかなり濡れてしまいました。

カイテリテリに戻ったのが午後2時近くでした。ここからこの日の宿泊地ピクトン Picton に向かいました。ネルソンからピクトンの間は入江が入り組んで複雑な地形のため、3時間くらいかかります。ハブロック Havelock というところからクイーン・シャーロット・ドライブ Queen Charlotte Drive に入ると、マールボロ Marlborough 地方になります。実に複雑な海岸線で多くの島があります。このような地形は日本にはありません。この一帯を総称してマールボロ・サウンド Marlborough Sound と呼びます。まずカイウマ湾 Kaiuma Bay が見えてきました。
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この入江はケネプル・サウンド Kenepuru Sound と言います。
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カーブの多い道ですが、カーブを曲がるたびに美しい海が見えます。やがてマールボロ・サウンドでもっとも有名なクイーン・シャーロット・サウンド Queen Charlotte Sound になります。
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そしてピクトン港が見えてきました。
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ピクトンから車で7分のところにビーチ・サニーベイル・モーテル Beach Sunnyvale Motels があります。途中の景色がいいため、何度も車を停めたのでそこに着いたのは午後6時でした。モーテル経営者の奥さんは那子(ともこ)さんという日本人です。ご主人の Colinさんは日本のレストランで働いていたことがあり、日本語が少しできます。人の好さそうな夫婦です。夕食のあと1時間くらいお茶を飲みながら3人で話しました。Colinさんは日本語を練習したいから日本語で喋り、私は英語の練習をしたいから英語で喋る、那子さんはその両者を取り持つという珍妙な会話でした。

(2011/1/16)
by tochimembow | 2011-01-19 12:25 | 国立公園とその周辺
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片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず(芭蕉)


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