人生漂流

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さらばニュージーランド

クライストチャーチ最後の夜です。昨年10月始めにニュージーランドに来て以来半年に少し満たない期間でしたが、いろいろなことがありました。来たときは9月のクライストチャーチ地震の後で、まだ道路が封鎖されたり、倒壊した建物があったり、頻繁に余震があったりしましたが、街全体は落ち着いていました。12月26日にまた大きな地震があり驚きました。さらに今年の2月22日にクライストチャーチ市内を震源地とする地震が起こり、マグニチュードは6.3と小さかったのですが、直下だったため大きな被害が出ました。そうこうするうちに今度は私の住まいがある宮崎で新燃岳の噴火があり、我が家にも大量の降灰があり、いまだ火山活動はおさまっていません。そして3月11日の東北地方大地震です。両方の国で天変地異が起こり、自然の驚異を思い知らされるとともに、そういう中でもたくましく生きる人間の強さも知りました。異国にいて日本の地震に関するニュースを聞いて嬉しく思ったのは、これだけ大混乱が起こっているのに犯罪が起こらないことに驚いている外国通信社の報道です。また福島原発の災害拡大を命懸けで食い止めようとしている人達の様子を伝えた記事には涙しました。

ここに来て主に二つの収穫がありました。一つはニュージーランドの自然のすばらしさです。もともとこの国の自然を観たくて来たわけですが、その期待は裏切られませんでした。ニュージーランドの海が想像以上に美しいことに驚きました。山の美しさについてはある程度予備知識をもっていました。しかし各地の山を歩きながら感じたことは、むしろ日本の山の素晴らしさです。日本アルプス、尾瀬、東北や北海道の山は世界一級の美しさを持っていると思います。屋久島、霧島、阿蘇、久住、大山、石鎚山など西日本の山も独特の美しさがあります。日本の山はニュージーランドよりも変化に富んでいて、もっと世界の人に知ってもらいたいと痛感します。

もう一つの収穫はニュージーランド人のライフ・スタイルあるいは人生観を垣間見たことです。平均所得は日本よりずっと低いと思いますが、お金持ちの国をうらやむような様子は全くありません。お金、地位、名声に執着せず、生活を楽しむことに重きを置いていると人に優しくなるのだろうと思うことがありました。こうのんびりしていると若い人の希望や向上心が薄くなるのではないかと思うこともありますが、リタイアした我々の世代にはとても住みやすい国です。

日本とほぼ同じ面積をもつこの国で人の気質が日本と異なる決定的要因はやはり人口の違いだと思います。人口密度が日本の1/30となると人を押しのけ、かき分け生きていく必要がなくなるのでしょう。日本はどんな田舎に行っても人家があり、看板があり、人の匂いがしますが、ここはちょっと街を離れると全く人に会わないようなところがたくさんあります。そういうところで人間の営みをちょっとでも感じるのは羊を見たときで、これは誰かが飼っているのだなと想像しますが実際にそれを飼っている人を見たことはまれです。日本では原始の風景というものはほとんど見ることができず、どんな山奥に行っても人が住んでいますが、それでも里山など美しい生活風景というものがあります。それはぜひ守っていってもらいたいと思います。

ニュージーランドは哺乳類がいない島だったということはここに来て初めて知りました。約700年前にマオリが移住し、哺乳動物を持ち込み、それからヨーロッパ人が入ってこの国を変えてしまいました。天敵がいないため飛ばない鳥が誕生し、人間が入ってきたためそれらの鳥が絶滅の危機に瀕していることも知りました。飛んで逃げる必要がないといつか飛ぶ能力を失うというのは教訓的です。人間も便利な暮らしに慣れすぎると本来の人間らしい能力を失ってきているかもしれません。

今度の両国での地震を見ると同じ島国である日本とニュージーランドは一衣帯水の運命を持っているような気がします。どちらも環太平洋火山帯の上にあるというスケールで考えると、運命を共有していると言えるでしょう。今回の日本での地震でニュージーランド人は日本に対して他人事ではないという共感と同情を持っています。今回の災難に遭遇した二つの国が、そのことで人々が助け合って生きていくようになれば、これが禍を転じて福となすことになると信じています。

さらば、ニュージーランド。またいつか来ます。
(2011/3/18)
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by tochimembow | 2011-03-18 19:16 | なぜNZへ
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定年退職後、リフレッシュのためニュージーランドを半年間漂流しているうちクライストチャーチ大地震に遭遇。日本に戻ったら、またしても働くことに。 片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず(芭蕉)


by tochimembow
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