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人生漂流

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プロメテウスの火 原発

今回の東日本大地震でトラブルを起こした福島原発の危険度はチェルノブイリ原発事故のときと同じレベル7に引き上げられました。外部への放出量そのものはチェルノブイリの1/10ですが、原子炉に含まれる放射能量がチェルノブイリより多く、それが放出されたときの危険性はチェルノブイリ以上となるからです。

原発のコスト
我が国の電力会社がこれまで原発を推進してきた理由は大きく二つあります。一つは、原子力発電は電力コストが低いこと、もう一つはCO2の産生が少なく、クリーン・エネルギーであることです。産業経済省資源エネルギー庁が発表した2008年エネルギー白書や電気事業連合会の試算では原発による電力コストが安いことになっています。
 (発電施設を40年間稼働したときの1kw毎時あたりの電力コスト)
           エネルギー白書    電気事業連合会
  水力       8.2~13.3円     11.9円
  火力(石油)   10.0~17.3円     10.7円
  天然ガス      5.8~7.1円     6.2円
  原子力       4.8~6.2円     5.3円
  火力(石炭)    5.0~6.5円     5.7円
  太陽光        46円          -
  風力         10~14円       -
これには送電コストが含まれていません。原発は大都会から遠くに設置されるため送電ロスが大きく、送電コストは高くなります。太陽光発電のコストは急激に下がりつつあり、2010年に原子力より安くなったという報告(世界 1月号)もあります。

しかし今回の事故で安全にかかるコストを見直さなければならなくなりません。福島原発はマグニチュード8の地震を最大限に想定して建設し、最大高さ6メートルの津波を想定して防潮堤を作ったそうです。その想定を越えた災害が起こったときはどうするかというマニュアルはありませんでした。マグニチュード9,高さ10メートルの津波を想定して原発を作っていたら、建設費が何倍にもなったと言われています。いったん災害が起こった今、原発の事故処理にかかる費用は驚くべき数字になっているはずです。とても1kwあたり5~6円の話ではありません。コストを考えて災害の想定レベルを決めた疑いは濃厚です。今後、原発を建設しようとするとこれまでの想定レベルに合わせた地震・津波対策ではとても許されなくなりますから、原発は非常にコストがかかる発電となり電力会社自身が新規の原発建設をやらなくなるでしょう。
(資源エネルギー庁OBが東電の副社長として天下りしているという今日のニュースでエネルギー白書の信憑性そのものに疑いの目を向けなければならなくなりました)

原発はクリーン・エネルギーではない
第二に、原発は毎時1kwあたりのCO2産生量が22グラムと同じコストの石炭火力が出すCO2 975グラムより圧倒的に少ないことが売りでした。しかし1基の原子炉に含まれる放射能は広島原爆の100倍以上とも言われ、これが放射能をまき散らすようになるとクリーンどころかもっともダーティなエネルギーとなることが今回証明されました。

テロ攻撃の危険性
基本的に、原発は核爆弾を原子炉の中でゆっくり爆発させてエネルギーを取り出すしくみですから、核兵器と同じ危険性をはらんでいることを忘れてはいけないと思います。今回の福島原発事故で別の危険性がクローズアップされてきました。それは原発がテロの対象となり得るということです。原発を攻撃すれば9.11テロ以上の大パニックが生じることは明らかで、テロリストが目をつけないはずはありません。

天界から盗んだ火を人間に渡した神プロメテウスはゼウスの怒りに触れて山にはりつけにされ、ハゲタカに肝臓をついばまれ、傷が癒えるとまたハゲタカに襲われるという永劫続く罰を受けることになりました。核反応を利用してエネルギーを取り出す原子力発電という「火」を手に入れた人間はそれが手に負えないプロメテウスの火であったことを今思い知らされています。
(2011/4/13)
by tochimembow | 2011-04-13 21:40 | 大地震
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片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず(芭蕉)


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