人生漂流

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2011年 09月 10日 ( 1 )

最近、こんな本を読んだ

ジェフリー・ディーヴァー 青い虚空 (新潮文庫)
最近亡くなった俳優で読書家の児玉清氏はジェフリー・ディーヴァーの大ファンだったことをNHKの「週刊ブックレビュー」児玉清追悼番組で知った。そこで、興味を持ってディーヴァーの本としてこれを選んだ。コンピューターを使った犯罪を描いたものだが、ストーリーはすこぶる面白い。クラッカー(ハッカー)にとってはコンピューター内の機密などないに等しいことがよく分かった。パスワードを見破ることは素人でもできると聞いたことがあるが、この本では、クラッカーが、相手が一瞬インターネットにつないだ隙を狙って情報をすべて盗み出す。それをもとに殺人を繰り返し、犯人に対抗して警察が雇ったのがクラッカーとして逮捕され、服役中であった者で、両者がコンピューター上で熾烈な戦いを繰り広げる。
 この本によると、もっともセキュリティが甘い組織は学校だそうで、成績表の書き換えなどいとも簡単なことのようだ。最近、コンピューターを悪用した犯罪:ソーシャル・エンジニアリング、フィッシング、スキミング、スパイウエア、ワンクリック詐欺などが横行しているが、我々はそれらが何かをあまりにも知らない。この本を読むと、そういう犯罪に気をつけなければと注意心をかき立てられる。ウイルス対策ソフトをインストールしているだけではダメなのである。

高木仁三郎 原発事故はなぜくりかえすのか (岩波新書)
高木氏は11年前に亡くなった科学者で、もともとは日本原子力事業という原子炉の会社に勤めていて、その後、東大、都立大の教員を経て、原子力資料情報室(現在はNPO法人)を立ち上げ、市民運動家として反原発運動を展開していた人である。この本は、高木氏ががんで、余命2ヶ月というときに遺言のつもりで口述したものをテープ起こしして出版したものである。福島原発の事故が起こったとき、高木氏が生前この事故を予言していたと評判になった。
 本書は、原発事故がなぜ起こるかを技術的な側面から解説しているわけではない。人的な側面(原子力産業や電力会社に勤める人の意識、科学技術庁など関係官庁の考え方の甘さ、原発のチェック制度、学者を中心に構成される各種委員会の在り方)に原発事故を招く原因が潜んでいると指摘する。また数々のデータ隠蔽、ねつ造がされて事故対策がおろそかになっていたとも指摘している。高木氏の存命中、すでにチェルノブイリ事故は起こっており、日本でも1995年の福井での「もんじゅ」の事故、1997年の東海村・動燃での火災爆発、1999年の東海村JCOでの臨界事故など原発事故が多発していて、高木氏はそれらを分析して、企業、政府、学者が根本的な事故対策を考えないと大きな事故を招くと予言していた。この本がやるべきといっていた対策を立てていたら、福島原発はあれほどひどい状況にはなっていなかったであろう。問題点を指摘する人がいるのに、それに真剣に向き合わないという体質が日本にはあり、安全性とか技術というものを考えさせる本である。
 高木氏が原子力資料情報室のを社団法人とするよう科学技術庁に申請したとき、それが却下された。その理由は、原子力基本法では原子力の研究開発および利用を推進するとうたっているから、脱原発を目指す原子力資料情報室は公益性に反するということであった。このエピソードに今回の原発をめぐって起きた問題が象徴的に現れているように思える。
 この人もすでに1997年に亡くなっているが、平井憲夫という原発で働いていた人が現場から原発がいかに危険であるかを語った記事がある。これも一読すべき文である。
http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html#page1

中村 明  語感トレーニング-日本語のセンスをみがく55題 (岩波新書)
私は文章の書き方や言葉(日本語、英語にかかわらず)に関する本をよく読むが、語感という視点から日本語を論じた本は初めてだった。たとえば「ご飯」と「ライス」と「めし」では使う場面が異なる。「言う」と「ほざく」と「おっしゃる」と「言われる」では、言葉にこめた尊敬の気持ちが異なる。会話で自分の妻のことを言うのに何というか?「妻、うちのやつ、かあちゃん、かかあ、家内、かみさん、愚妻、細君、連れ合い、女房、ワイフ、フラウ、山の神、嫁」など、それぞれ夫は結構呼び方に困っているのではないだろうか?女性が配偶者を指すとき「主人、旦那、亭主」が使われてきたが、いずれも男性優位の時代の呼称である。「夫」と呼ぶ人はまだ少ない。このように同じ意味でもニュアンスが違う言葉の使い方を指導している。
 「次の言い方のどれが正しいか? 【a.考えた b.思った c.信じた】ことをすぐそのまま口に出してはいけない。」というような例題で、この場合はどの言葉を使うのが適切かというレッスンをしながら、読み進めるので参考になることが多い。ただし、語感には一般的なルールがないから、このときどういう言葉を使えばいいだろうというときにはこの著者が書いた『日本語 語感の辞典』(岩波書店)を参照するしかない。

水野敬也 夢をかなえるゾウ (飛鳥新社)
本を注文して取り寄せたら、帯に「170万部のベストセラー」とあった。基本的にベストセラーは読まないという偏屈な主義を持っているが、買った以上読むことにした。しがない若者がある朝、「おい、起きろや」という声で目を覚ますと部屋にゾウがいて、自分は神様だという。ガネーシャと名乗るそのゾウは、そのまま部屋に居着いて、タバコを買ってこい、みつまめを食わせろと関西弁で要求する。そのゾウがいうことを聞いて、実行すれば成功するといわれ、若者は半信半疑で実行するのだが、最初の課題は「靴を磨け」で、次は「コンビニでお釣りを募金しろ」、「食事は腹八分にしろ」とわけの分からないことを要求される。それをやっているうちにだんだんやる気が出てきて、若者は変わっていくというストーリーになっている。要を言えばこの本は、ピーター・ドラッカー、アンドリュー・カーネギー、スティーブ・ジョブス、ビル・ゲイツ、リンカーン、カーネル・サンダース、福沢諭吉、松下幸之助、イチローなど有名人の人生から得られる成功の秘訣を分かりやすく紹介したものである。面白い仕立てになっているが、軽く読めすぎて後に残らない気がした。人生の教訓を教える本はじっくり考えながら、読む方が効果的ではないだろうか。
(2011.9.10)
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by tochimembow | 2011-09-10 18:06 | 読後感
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定年退職後、リフレッシュのためニュージーランドを半年間漂流しているうちクライストチャーチ大地震に遭遇。日本に戻ったら、またしても働くことに。 片雲の風にさそはれて漂泊の思ひやまず(芭蕉)


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