20世紀初頭、ダニーデンからクロムウエル Cromwell まで235km延びる鉄道があり、オタゴ地方の産業に多大の貢献を果たしていました。1980年、この路線の途中にダムを建設するため、鉄道の一部が撤去され、1990年に路線廃止となりました。そのときダニーデン市は一部を観光鉄道として再使用することを決めて寄付を募り、寄金によってミドルマーチまでの77kmがタイエリ渓谷鉄道として再スタートしました。
日によって時刻表が異なりますが、この日は9時30分にダニーデンを出発して、プケランギまで行き、小休憩のあと11時45分に引き返して13時30分にダニーデンに戻ってくるスケジュールとなっていました。プケランギまでは58kmあります。

客車両は6両(1両は食堂車)あり、一両に約35人分の座席があります。この日はほぼ満員でした。

トンネルをいくつかくぐるとタイエリ渓谷に入って行きます。

案内書には写真を撮るべきポイントが5ヶ所書いてありますが、途中ヒンドン Hindon というところで止まって休憩をします。

渓谷全体が俯瞰できるところです。
折り返し点のプケランギに着くと、列車の最後尾に機関車を接続して、逆向きに走る準備をしました。

座席指定のため同じ側の景色を行き帰り二度見ることになりますが、席を入れ替えて帰路は反対側の景色が見えるように工夫すればいいのになと思いました。
これまでニュージーランド国内のあちこちを旅行して回ったので、渓谷自体は感動するほどの景色ではありませんでした。しかしのんびりと列車に揺られていくのも乙なものです。乗っているのはほとんど外国人観光客です。思えば日本にはこれ以上の素晴らしい鉄道風景がたくさんあります。そういうところをどんどん路線廃止していますが、こういう形にリニューアルして多くの人が美しい風景を楽しめるようにすることを考えるべきではないでしょうか。それとも観光収入など微々たるものだから合理化重点でよいということなのでしょうか。
(2011/3/2)
ボルドウィン・ストリート Baldwin Street
1号線からダニーデンに入るとすぐにオタゴ大学がありました。ニュージーランドで最古の大学で、南島で医学部があるのはこの大学だけです。国道に面したところにモダンな門(石碑)が立っていました。そこから北に行ったところに世界で一番勾配が急な道路、ボルドウィン・ストリート Baldwin Street があります。水平距離は100メートルほどしかありませんが、最大斜度が20.3°あり、ギネスブックに記録されています。

下から見上げると確かに急です。上には見物人が4人ほど道路に座って車が来るのを待っています。

車で上がってもよかったのですが、歩いてその斜めさを体験しようと側道にある階段を上りました。階段は400段近くあります。上から見るとこうなります。

両脇には家が建っていますが、塀や生け垣も斜めに作ってあります。家はもちろん水平です。
ダニーデン駅 Dunedin Station
モーテルへ行く途中にあるダニーデン駅はなかなか立派でした。

ダニーデンにはスコットランド風の古い建物が多いのですが、その代表がこの駅です。1907年に建てられました。

駅の前にもスコットランド風の建物があります。

(2011/3/1)
クライストチャーチから出るのに渋滞で1時間以上かかりました。私の住まいからダウンタウンに向かって2つめの信号の通り(Bealey Avenue)から先は全面通行止めで、そういう影響が周辺部に出ているようです。道路脇には液状化で道路に流れ出した泥が積んであります。
クライストチャーチから約250キロ走ってオアマル Oamaru に入り、昼食を兼ねてこの町を見ることにしました。ここは良質の石灰岩が取れるところでそれ(オアマル・ストーン)を使った古い建物が Thames Street に保存されています。この通りには150年ほど前に建造された建物が並んでいます。クライストチャーチにもここの石灰岩を使った教会などが多くあります。

写真はこの通りのシンボル的存在の旧郵便局です。

下の写真の左はナショナル・バンク National Bank 、右はフォレスター・ギャラリー Forrester Gallery です。

下の写真はオペラ・ハウスで、それぞれ特徴的な建物がいくつもこの通りに並んでいます。

この町でもう一つ有名なのがパブリック・ガーデン Oamaru Public Garden です。

クライストチャーチのハグレー公園のようにバカでかい公園ではありませんが、趣が異なるいくつかのゾーンに分かれています。日光の橋に似せたという橋もあります。

オアマルからさらに40キロほど南下してモエラキ・ボルダー Moeraki Boulders という海岸に寄りました。そこにはまん丸の岩があちこちに転がっています。ボルダーとは巨大な丸い石という意味です。

そこから一走りしてダニーデンに入りました。ダニーデン見物は次の日にして、モーテルに着くと早速ランドリーで洗濯を始めました。乾燥機がなかなか空かないので、モーテルのオフィスに行って「乾燥機が混んでいる」と言ったら「クライストチャーチから来た客がみんな洗濯しているのでなかなか空かない。うちの乾燥機で乾かしてやるから持ってこい」と言われ、モーテルのオーナーが使っているドライヤーで乾かしてくれました。
夕方のテレビを見たら、クライストチャーチの電気は82%復旧し、水道は65%復旧したそうです。まだ復旧しない人はクライストチャーチ近くのアシュバートンなどに泊まっていると言っていましたが、地震難民はダニーデンまで来ていました。考えることは皆同じですね。「たかが水くらいで難民か」とも思いますが、便利な文明の利器になれすぎた我々は水が出なくなっただけで大騒ぎです。携帯、カーナビ、ウォッシュレット、インターネットなどほんの20年前はなくてすんでいたものが今ではそれなしでは生活が考えられなくなっています。
(2011/2/28)
地震で生活が思うようにできないのでしばらく北島を旅している方がいいと大家さんからもメールが来ているのですが、いったんはクライストチャーチに帰って家の様子を見、状況次第ではまた旅に出ようとウエリントンに向けて出発しました。ランチを食べにFoxtonという町のカフェに入ったら女主人が「どこから来たか」と聞くのでクライストチャーチからだと答えると地震のことをあれこれ聞かれました。そして「元々は日本からか?」と聞くので「そうだ」と言うと「娘が4年間東京に住んでいた」と言って日本のことをいろいろ話し始めました。「東京できれいな庭がある寺に行ったけど知ってるか?」と言われましたが、どこか思いつきません。「近くに池や動物園があった」というので「Ueno か」と聞くと「そんな名前のところだった」と言います。上野なら寛永寺かもしれないが、寛永寺に庭園があるかどうかは知りません。他に客がいなくて暇そうだったので「これからウエリントンに行って夜7時の飛行機に乗るけど、ウエリントンでいいところを知っているか?」と聞くと、誇らしげに「私は国会議事堂のそばで育った。ウエリントンのことなら何でも知ってる。まず最初に行くべきところはテ・パパ国立博物館で、それからケーブルカーに乗って市を見下ろし、ケーブルカー近くの植物園に行くといい」と地図を指しながら説明してくれました。
(Foxtonのカフェ)

これはいい情報を得たとそこから約1時間半かけてウエリントンに入りました。ウエリントン市内は渋滞で車がなかなか進みません。国会議事堂隣りの首相執務室(蜂の巣の形をしているのでビー・ハイブ Bee Hive と呼ばれる)が有名ですが、その間近を通るとネットで見た写真から想像していたものよりずっと小さく、しかも狭いところにありました。
ようやくテ・パパ博物館に到着しました。

ここは正式にはニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワ Museum of New Zealand Te Papa Tongarewa といいます。クライストチャーチのカンタベリー博物館よりずっと大きく、近代的です(1998年開館)。余談ながら、ニュージーランドでもっとも地震が起こる危険性が高いのはウエリントンと言われてきました。特にこの博物館が建っている土地は活断層がある埋め立て地で、大きな地震が来たら所蔵品が破壊されてしまうと心配する人もいます。その前にクライストチャーチに大きな地震が来ましたが。

自然に恵まれた国だけあって、自然に関する展示はよくできていてただ「見せる」だけでなく、「魅せる」、「体験する」機能も充分備わっています。地震コーナーには地震体験ができる模擬ハウスがありました。クライストチャーチで地震があったばかりなのでここは人気です。

私も入って体験してみましたが、4日前の地震の方が揺れが大きかったような気がします。それよりも恐怖感があるのとないのとではずいぶん感じが異なります。
最上階には美術品の展示もありました。

最初は1時間くらいで出て、ケーブルカーに行こうと思っていたのですが、内容が豊富なので1時間で出るのはもったいなく結局2時間くらい見て回りました。半日くらいかけてじっくり見たい博物館です。
そこを出るとまた渋滞に捕まってレンタカーのオフィスに着いたのはオフィスが閉まる10分前でした。クライストチャーチに午後8時ごろ着きましたが、ウエリントンの賑やかさに比べてクライストチャーチは静まりかえっていて車もわずかしか走っていませんでした。家では水がまだ出ておらず、トイレに臭気が漂っています。ここでは暮らせないので一日おいて再びダニーデンへの旅に出ることにしました。ダニーデンへの旅は別項で。
(2011/2/26)